馬は言葉を話さない。
でも、何も表出していないわけではない。体、声、表情、雰囲気など様々な方法で私たちに訴えかけ、伝えている。でも、その言葉は初対面ではわからない。私が今日、フランスの方と話しても全く何を話しているのかわからないのと同じだろう。
ある日、玉三郎に乗っていたひろくん(年長)が、こう言った
「ねえなっちゃん、耳の言葉ってあるよね。わかるよ、ほら、あっちむいてる。」「足の言葉は覚えたよ。かきかきしてたら欲しいものがあるんでしょ」
それからひろくんは、玉三郎の耳が動く方向を気にして、あっちでカラスが飛んだから気になったのかな。ひろくんが喋ってるの聞いてくれてるね。と、ぽつりぽつりと話す。私はそうだね〜と聞きながら、景色を見る。ひろさんの言葉でいろんな気付きがある。
すると、風がぴゅう、と吹いた。
「へえ、髪の毛の言葉もあるんだ。今、ばさぁってなったから、嬉しいんじゃない?」と、ほわりと笑って、玉三郎のたてがみを撫でた。
髪の毛の言葉なんて、私は考えたこともなかったよ。ひろくんらしい五感が軽やかに開かれた瞬間だった。そして、日々玉三郎と暮らして、馬語を体感しているから、そうひろくんは感じた。馬の感情を読み取るのに、大人の先入観なんてなくていい。そうやって、相手の気持ちを知ろうとすること自体が、とっても尊くて大切なことだから。
~こどもたちとうまシリーズ~
・頭をぐりぐりしてくるアナに。
「アナ!ぶつかってこんで!どんだけきくちゃんのこと好きなの!」
・地震の避難訓練で、建物の外からでるように!って教わった時。
「馬たちはどうするの?ピースのところが燃えちゃったら?」
~馬房から出して馬も逃げることを説明~
「じゃあ、子どもも大人も馬も逃げれるんだ。良かった」
・草刈りしてくれてるスタッフを見て
「草刈りしてくれとるなぁ、うぃーんってやつは倒れるだけだから、ごはんになって食べてくれるけ、いいねえ」
・鈴蘭を見て
「なんで鈴蘭ってこんなちっちゃいの?馬なの?」
認定こども園ぱっか 酒井 尚子
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